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ニュースレター バックナンバー(GROW通信 第71号)2026年2月配信

IGSでは、生徒がこれからの未来を切り拓くために身に付けるべき資質・能力の育成に向けて「新たな一歩」を踏み出す先生方をご支援するためのさまざまなコンテンツを、月1回、無料ニュースレター「GROW通信」としてお届けしています。「GROW通信」の配信はこちらからご登録いただけます。

GROW 通信-1

GROW通信 第71号は
【「Ai GROW」を活用した学校課題の解決】をテーマに、先の大学入学共通テストとコンピテンシーの関係性分析の結果をお届けいたします。


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・【特集記事】「非認知能力」は共通テストの結果に影響するのか?ー3つの統計手法×842名のデータから見えた示唆ー
・【事例紹介】群馬県立太田高等学校
・【レポート】<東京開催>三菱みらい育成財団助成事業「【教科×探究】実践支援プログラム」
・【連載】IGSのおすすめ文庫
・【探究への道】新潟県阿賀野市立水原中学校
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【特集記事】「非認知能力」は共通テストの結果に影響するのか?
ー3つの統計手法×842名のデータから見えた示唆ー

「テストの点数を伸ばすには、もっと勉強時間を増やすしかない」─。先生、そして生徒もこのように考えてしまうことが少なくない中、3つの統計手法を用いた多角的な分析結果が出てきました。前回の分析から対象人数やデータも増え、より精度の高い知見が得られています。生徒の「論理的思考」のみならず「自己効力感」「誠実さ」「外交性」といったコンピテンシーが、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の得点と一定の関連をもつ可能性が、Ridge回帰・相関分析・決定木分析の3手法で確認されたのです。この分析結果は、教科指導と非認知能力の育成を両輪で進めることの重要性に、新たな角度から光を当てるものといえるかもしれません。

分析の概要─3つの手法で多角的に検証

本分析は、全国の複数校の高校3年生を対象に(科目により最大842名)、IGS株式会社が提供する非認知能力のアセスメント「Ai GROW」のデータと、共通テストの得点データを統合して行われました。分析手法として、Ridge回帰(学校やパーソナリティの影響を統制した上で非認知能力の追加予測力を検証)、相関分析(「Ai GROW」で計測する非認知能力と共通テストの得点の関連を一覧化)、決定木分析(共通テストの得点を左右する「分岐ルール」を可視化)の3つを組み合わせて多角的に検証しています。下表はRidge回帰の主要結果です。

表
※R²(決定係数)は予測精度の指標で、0〜1の値を取り、1に近いほど予測が正確。ΔR²は非認知能力を加えたことによる向上幅。推定は観察データに基づく関連であり、因果効果を保証するものではありません。

今回はコンピテンシー(相互評価の結果)と傾向チェック(IATというバイアスを計測するテストの結果)の両方のデータを使用しています。なお、「自己効力感(傾向チェック)」と「自己効力」は異なる測定方法に基づく別の指標です。また、本分析は観察データに基づく関連性の検証であり、「非認知能力を高めれば必ず得点が上がる」という因果関係を直接証明するものではないにご留意ください。

Ridge回帰に加えて相関分析・決定木分析も実施した結果、以下の3つの横断的パターンが確認されました。

1.物理でRidge回帰の追加予測力が最大(ΔR²=0.095)
2.決定木分析で「論理的思考」の他「自己効力感(傾向チェック)」「誠実さ」が主要科目の第1分岐
3.「平均値」が「直近値」より得点との関連が強い傾向─早期育成の示唆

上記3項目の詳細をはじめ、各科目の詳細分析(英語・国語・物理・日本史探究など)や学年別の具体的な指導提案は特別レポートにまとめましたので、ぜひご覧ください。

今回の分析から得られたもっとも重要な示唆は、非認知能力は「直近1回の測定値」よりも「入学以降の複数回の平均値」の方が共通テストの得点との関連が強い傾向があるという点です。また、国語では「成長マインドセットの傾き(トレンド)」が最大のインパクトを示すなど、「今の値」だけでなく「伸びているかどうか」も重要であることが分かりました。つまり、高校3年生になってから急いで非認知能力を伸ばすのではなく、高校1年生──あるいは中学段階──の早い時期から継続的に育成することが重要である可能性が示されています。

非認知能力が得点に及ぼす影響は限定的ではありますが、3つの手法で一貫した傾向が確認されました。テスト対策の代替ではなく、学力を下支えする「見えない土台」として、日々の授業や学校生活の中で生徒が自ら課題を見つけ、粘り強く取り組み、他者と協働する機会を意識的に設けることが、結果的に従来の学力にも良い影響を与える可能性が示唆されています。なお、決定木分析では過学習の可能性も含まれているため、結果はRidge回帰・相関分析と照らし合わせて総合的にお読みください。

詳細については、以下の特別レポートをご覧ください。


▶特別レポートはこちら

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【事例紹介】群馬県立太田高等学校

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古畑春樹先生

「失敗力」を掲げる進学校が、探究と進路をつなぐために始めたこと
─「育てたい力」を可視化し、探究とキャリアの「ハブ」にする挑戦─

群馬県立太田高等学校は、創立128年の歴史をもつ県内有数の進学校です。「文武両道」「質実剛健」の校風の下、同校のグラデュエーション・ポリシーには「探究力」「メタ認知能力」などに加え、「失敗力」という独自の資質・能力が掲げられています。「失敗を恐れずチャレンジする」─この言葉の背景には、「授業中に発言して間違えたら恥ずかしいので挙手をしない」という生徒の姿がありました。探究を統括する古畑春樹先生が、生徒の失敗への抵抗感を払拭しようと提案したものです。しかし、こうした「育てたい力」の成長をどう測り、可視化し、探究や進路に生かしていくのか─それが同校の課題でした。

探究と進路が自然につながる「循環デザイン」

同校の探究活動は、進路実現と密接に結びついている点が特徴的です。生徒は「将来創造したい理想の社会」を描き、そこから逆算して探究を行うバックキャスティング型のアプローチを採用しています。1年次の「0から1」では株式会社SUBARUなど約100社への企業訪問を通して社会を知り、2年次の「1から10」では自ら企業や大学にアクセスして探究を深めていきます。

「進路実現の先に創造したい社会がある」「創造したい社会があるから進路希望が見えてくる」─この双方向の関係性を意識させることで、探究と進路が自然につながる設計になっています。大学入学後のミスマッチを防ぐ意味でも、注目に値するアプローチです。また、古畑先生が2学年分の授業の流れを資料も含めて用意し、ルーブリックを用いて担任の先生方が抵抗なく取り組める体制を構築している点も、組織運営の参考になります。

アセスメントが「見えない強み」に光を当てる

同校では「Ai GROW」と「数理探究アセスメント」の2つのアセスメントツールを導入しています。「本校の育てたい6つの資質・能力を定量評価できると聞き、『これだ!』と思いました」と古畑先生は当時を振り返ります。特に手応えを感じているのが、学力との相関が必ずしも高くないという結果です。「学力がそこまで高くない生徒でも、ある項目で高い数字が出ている。その結果を使って『こんなに力があるのだから、こういう取り組み方をしたらどうだろう』と声掛けができる」と古畑先生。テストの点数だけでは見えなかった生徒の強みに、データで光を当てられるようになったのです。相互評価による自己肯定感の向上や、志望大学のアドミッション・ポリシーとのマッチング、推薦書作成支援など、今後の展開も見据えています。

「生徒自身が『これやって意味あるの?』と感じることもあるかもしれない。しかし、最初と最後で自分の成長を見取れると、『やってよかった!』という感覚になる」と古畑先生は語ります。「進路とキャリアと探究をつなげるハブ的な役割を、アセスメントが担えるのではないか」探究活動と進路指導の接続に悩む先生方にとって、同校の実践は大きなヒントになるはずです。ぜひ記事全文でご覧ください。

▶ インタビュー記事はこちら

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「Ai GROW」についてさらに詳しく知りたい先生は、以下もご参照ください。
▶「Ai GROW」の概要はこちら
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【レポート】<東京開催>三菱みらい育成財団助成事業「【教科×探究】実践支援プログラム」

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「プラスチックごみ削減」をテーマに5教科の先生が探究をしたら、何が起きたのか

─「授業作りは高度にクリエイティブなものづくり」─

数学、理科、国語、社会、英語─5つの教科の先生方が、「プラスチックごみを削減するにはどうしたらよいか」という同じテーマで探究に取り組んだとき、何が起きるのか。2部構成で行われたこのワークショップには、公私立を問わず多様な学校から先生方が参加。聖徳学園中学・高等学校を会場に開催された「【教科×探究】実践支援ワークショップ」では、その答えが鮮やかに示されました。

結論からいえば、5教科のアプローチは驚くほど異なりました。数学科のグループは「消費者が行動を変える価格帯」を数値で導き出し、理科のグループは「そもそも本当に悪いのは何なのか」を科学的に問い直しました。「家庭での会話」から意識を変えるアプローチもあれば、「英語で世界に発信する」というダイナミックな提案も。各教科がどのような切り口でこのテーマに挑んだのかは、ぜひ記事本文でご確認ください。

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▲社会科チームの発表に聞き入る先生方

▶【教科×探究】東京開催の実施レポートはこちら

▶本プログラムの次年度開催の詳細はこちら

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IGSのおすすめ文庫
先生方、いつもお世話になっております。IGS株式会社の三輪です。

読解力や知識の定着だけでなく、思考力や創造力、集中力といったさまざまな力を育む「読書」の効果に着目し、本連載では、弊社から中高生にお勧めしたい書籍を紹介させていただきます。課題図書選定の一助としてはもちろん、生徒との日常的なコミュニケーション・ツールとしてご活用いただければ幸いです。

今回ご紹介する書籍は、AIが身近になった現代社会だからこそ考えてもらいたい、AIとの協働について生徒たちに問い直す一冊...

『AIの時代を生きる:未来をデザインする創造力と共感力』(2021年 / 岩波書店)です。

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中高生での読み進めやすさ   ★★★★★
気づき・発見の多さ      ★★★★☆
探究への生かしやすさ     ★★★★★
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本書は、学習環境デザイナーや学習科学者として活躍される、美馬のゆり先生(公立はこだて未来大学 システム情報科学部 教授)による、AI時代を生きるために必要な力について、中高生とともに考えることを目的にまとめられた一冊です。カリフォルニア大学バークレー校人工知能研究所および人間互換人工知能センターに客員研究員としても勤めたこともある美馬先生だからこそもつ、多様な学術的背景をもとに未来のAI時代を具体的に推察します。

AIが身近になったことで、大人だけでなく子どもたちもまた、そのパワフルで便利なツールを利用する機会が増えてきました。一方、本来は自分の頭で考えるべき問題をAIに任せてしまったり、AIの回答を吟味せずに正しいと判断してしまったりするなど、大人からすると「その付き合い方はいかがなものか」と感じるような活用をしている生徒も少なくないようです。本書は、まさにそんな生徒たちに、AIの得手不得手を再確認させ、より良い使い方を考えさせる内容となっています。

6部で構成された本書は、序盤に最新のAI技術やAIの仕組み・メカニズムを説明しています。圧倒的な処理速度でデータを認識し判断できるだけでなく、言語理解や、未来予測までできるようになったAIが、今もなお進化し続けているという事実は、生徒にとっては頼もしくもあり、また恐ろしくもあることでしょう。現在の生活がますます便利になるかもしれない一方、自分たちの仕事がAIにとって代わられるかもしれない。そう思うと、成長しつづけるAIに負けないように、人間もまた変わっていく必要があることがよく理解できます。

では、私たち人間はどのように成長していけばいいのでしょうか。そのヒントは、本書の中盤で紹介される、AIと人間の違いにあります。自分なりの価値観に従って物事を判断する人間に対し、AIは学習した法則に従って物事を判断します。人間の感情や感覚をパターンとして学習させれば、それらを元に人間のように振る舞うことはできますが、本当の意味で人間の思いを理解することはできません。つまり、他人の思いを理解することは、人間にしかできないことだといわれているのです。

AIをより良く使う上で、人間しかもちえないこの「共感力」を育むことが重要だと、美馬先生は論じます。多様な他者の立場に身をおき、それぞれの人たちの抱えている困難に寄り添って解決方法を考えること。また、異なる考え方や背景をもつ人たちと、ときには妥協しながら結論を導き出すこと。予期せぬ問題に直面した際には、こうした能力が必要になります。「共感力」を備えることで、AIを最大限に活用することができ、またAIと差別化された人材として社会で活躍できるようになるはずです。

「共感力」の伸ばし方は、実にさまざまです。他者との関わりの中で抱いた違和感を見過ごさずに言語化してみたり、普段接することのない他者の生活を体験してみたり。生徒にとって幸いなことに、学校生活はグループ活動や行事、修学旅行など、意見の異なる他者との協働の連続です。生徒は本書を読んだ後にきっと、「普段の活動こそがAI時代に活躍できる人材になるために必要な経験だ」と気づいてくれるでしょう。

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本連載では、探究の設計と構築にフォーカスし、実際にカリキュラムをデザインされた先生方に実践をご紹介いただきます。読者の先生方にとって新しい一歩を踏み出す手助けになることを願っています。

第54回:増田有貴先生
「強くしなやかに」未来をひらく。「自己の生き方につながるような探究的な学び」の創造を目指して
─白鳥の飛来地・瓢湖のほとりで、「探究との出会い」をデザインする─

「予期せぬ変化や困難に直面しても、強くしなやかに問題を乗り越える力を高めてほしい」新潟県阿賀野市立水原中学校の増田有貴先生が1学年主任として掲げたのは、「レジリエンス」の育成です。白鳥の飛来地・瓢湖から約2km、創立66年・全校生徒472名の同校で、「地域探究×SDGs」を年間テーマに、探究のサイクルを生徒自身の手で回す実践が展開されています。

増田先生は学年朝会で生徒に「見通しをもち備える」「ピンチのときは誰かを頼る」「柔軟に自分を適応させる」などレジリエンスを高める5つのポイントを紹介。これは日常の在り方だけでなく、探究の学びにも有効な考え方だといいます。

特徴的なのは、地域環境学習や国際理解・国際交流といった多様な学びの場を、道徳や英語などの教科と意図的に接続させている点です。生物多様性について道徳でじっくり思考した後に環境学習へ、異文化理解を道徳で深めた後にJICA留学生5名との交流へ─この設計が、「単なる体験や調べて終わり」にならない学びを生み出しています。約150名の生徒のまとめレポートを廊下一面に掲示したところ、他学年の生徒や職員も足を止めてじっくり読む姿が見られたといいます。また、学年の先生方との対話を重ね、「創造的・柔軟に生徒とともに学びを創る意識」を共有することで前年度踏襲ではない魅力的な探究が創造できると、増田先生は実感を込めて語ります。

「予期せぬ変化や困難」は授業づくりにおいても多々ある、と増田先生は語ります。そんなときこそ教員自身が連携・協働しながら「強くしなやかに」乗り越えていく。その姿勢が、生徒へのレジリエンス教育の土台にもなっているのかもしれません。総合的な学習の時間の時数が限られる中、教科横断と地域の資源を活かして探究の質を高める工夫は、多くの先生方の参考になるはずです。

ぜひ記事全文でご覧ください。

  「探究への道」全文はこちら